これリストラかも…どうしよ?

人事から突然届いた一通のメール

早期退職を申請する…職場で言ってはいけない

「あなたが今の時点で辞めた場合の退職金が○百万円。さらに優遇制度の割り増しが○千万円プラスされます。残った有給は買い取り、こちらは最大で○十万円です…」

  社長と古株になりかけている平社員らしい通りいっぺんのあいさつの後、すぐに早期優遇退職制度の説明が始まった。淡々と数字が挙げられていく。
 説明が終わり沈黙の間。話に聞いていた懐柔や圧迫を待っていたのだが、一向に来ない。勿体ぶって一度は断りたかったが、条件に不満はない。いや、むしろ大満足。「だが断る! 逃げろ、これは罠だ!」とのアドバイスも聞こえてこない。
 耐えきれず自分から先に静寂を破り、「早期退職を申請します」と回答。うれしそうな人事部長に対して、社長の表情は変わらなかった。
 さっそく、会社が契約する再就職支援会社への連絡方法や、申請書の書き方を伝えてくる人事部長。ウキウキしていることが隠せないようだ。こちらも人助けをしたようで大変気持ちがよい。
 その様子を眺めていた社長が「前から決めていたのか」とポツリ。「ええ、まあ」などと適当に答えていると、「部長や局長のほうが非常に切実だった」と続けてきた。


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 嫌みらしいが、意図が分からない。「そうですか」と返事するしかなかった。会社と組合が揉めてるのか。社内事情に関心が薄いので知ったこっちゃないが。組合にとって、あっさり陥落したとんでもない裏切り者かもしれないな。
 申請書を渡す。「承認されるまで時間はかかりますが、遅くとも来月中旬までには連絡します。承認されると思ってくれて構わない」。ファミマの騒動を気にしてか、付け加えてきた。さらに「上司にも同僚にも早期退職のことは話してはいけません。もちろん上司には伝えますが、上司はその話をしてきません。そういうものです」とも。
 そういうものとはどういうものか、これまたよく分からないが、確かに職場の士気は下がるよな。いや、喜ぶ同僚もいるか。
 長いこと勤めてきた会社を去ることに決めたのに、なんの感慨も沸きあがってこなかった。正式に決まっていないせいか。

 昨日は久しぶりに遅くまで飲んだ。開放感? うっかり口を滑らせてはいけないから、もちろん会社とは関係のない人間とだが、とても楽しかった。カラオケで歌うなんて何年ぶりだろう。

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